「よいしょ、よいしょ、ふう、えいっ」

少女は、塔を登っていた。


中からではなく、外壁から。

ほとんどレンガの継ぎ目にある凹凸しかない外壁から少女は塔を登っていたのだった。


1 落下そして出会い


その少女の名はコルネ。
年は8歳、橙色に近く明るい茶色の長髪で、くすんだ黄色の
色がダサいワンピースのようなものを着ていた。
服のセンスは、正直言って皆無である。

さっきから何度も言っているがとにかくコルネは、その全くロッククライミングに向かない格好で
しかも命綱なしで塔を素手で登っているのだ。しかも、
けっこう速い。

「うへへへー・・・・こんな高いところ、のぼるのはじめてー・・・」
変態みたいな笑い方をしてなおも登り続けるコルネ。
これで分かるとおり、彼女は完全に、
変人であった。


・・・コルネが塔を登り終えるまでまだまだ時間がありますので、
皆様しばらくの間通販でも見てお待ち下さい。



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いやいや、そんなにいらんて。
そもそもその大きさで何が入るのか12平方cm。

「お問い合わせは012(強制終了)」
注:この世界には電話はありません。


・・・
なんやかんやで頂上までたどり着いたコルネ。
その高さなんと約2000m。塔がこんなに高く建てられるものか。
「うへへ、やっとついたー!」
塔の頂上はテラスになっていた。
「わぁぁー、いーけしきー!」
地平線の彼方を見渡せるほどの高さ。絶景かな。
コルネは景色を堪能するのかと思いきや
「やっほぉーーーい!(ぴょーん)」
なんと自ら頭から塔からコルネからは跳び落ちた!!


ゴオォォォオオーー
「せかいがさかさまにみえるぅぅうううううぅぅぅーーーー」
時速over100km/時。


ちょうどそのころ。
塔の入り口に一人の旅人がいた。
青いツンツン髪に青いツリ目、青い半袖の服に青いマントに青いズボン・・・・
見ているだけで寒くなりそうな格好をしている少年だった。
背中に掛けてある剣はかなり使い込まれており、若いながらも旅になれているようだった。
(肌以外)全身寒色なのはさておき。

「ここが天空の塔・・・ すげえ高えな。」


「・・・・・っていうか、上の方雲かかってんじゃねーか!どんだけ高いんだよ!」
その高さなんと約2000m。これで
よく今まで倒れなかったもんだ。倒れても困るけど。
「どうやって建てたんだこの塔・・・・」
多分、
宇宙の神秘☆
「まあいいか。入ろう。このために俺はここまで来たんだ。」
塔に行くため湖を船で横断してさらに凹凸のひどい道を歩んで1日。苦労しました。
そして少年が塔に入ろうとしたその時、


ゴーーーーーーーーー
「え?なんか上から・・・」
落ちてくる音が聞こえた。
「うほほーい、逆ロケットだよーー!」
コルネだった。
「うわああああっ!」


ドーーーーン(演出:惑星規模の爆発発生)



・・・
「うへへへ・・・ちゃくりくせいこー。たのしかった♪」
あの高さから落ちたにもかかわらず
無傷のコルネ。
まさに
最強。
「ぅ・・・ど・・・・どいてくれ・・・」
下から声がする。
「?」
下を見ると、青い人間がいた。どうやら彼を下敷きにしてしまったようだ。
すっげぇ地面にめり込んでる。
「あっ、ごめんね」
そう言ってコルネは足に思いっきり力を入れてとびのいた。
「ぐはぁ!」
その衝撃で、ついに少年は気を失ってしまった。
「あれ?」



・・・
「だいじょーぶー?生命活動してるー?」
青い少年に問いかけるコルネ。
約2000mの高さから落ちた人に下敷きになったら普通死んでると思う。
もっと言うと跳び落ちた人も死ぬと思う。
「ぅ・・・・ぁれ?俺・・・何で・・・・ 地面が見える・・・・」
普通に生きていました。
「うへへへ良かった生きてて」
「うわっ!変態!」
確かに変人だけど。
「・・・てか、お前誰?」
変人。少年はコルネに問いかけた。
「わたしこるねっていいます。よろしくうへへへへ☆で、きみは?」
「俺はオ「ああーっ!でっかい鳥さん!」おま、自分から聞いたくせに遮ってんじゃ・・・ !」

上空から巨大な鳥モンスター降臨。
「ギエエエエエエエ!」
その大きさ約10m。
「な、なんだコイツ・・・!」
しかも明らかに敵意むきだし。恐え。
「に・・・逃げろっ!!」
少年はコルネの手を引き、全力で走り出した。

「キョーーーーーッ」
注:コルネの腹の音
「こんな時に腹から音出してんじゃねぇよ!緊張感ねーな!」
「ごめんねー、今日朝からなにもたべてないのー」
走り続ける二人。追いかけてくる巨大鳥。
「ギョーーーーーン」
注:巨大鳥の腹音。
「あ゛ーっ!二人(?)して変な腹音出しやがって!」
「叫ぶと体力消耗するよ?」
「うるせー!」
無駄に叫ぶ少年。その間にも鳥はどんどん距離を縮めてくる。
少年はコルネの手を引いて必死に走り続けた。

しかし

なんと走っていたら大きな湖が視界に広がってきた。
天空の塔へ行くのにぶち当たる大きな湖だ。岸辺は沼。迂回はできない。
少年が乗ってきたボートはあるが、それではとても逃げ切れない。
「くそっ、万事休すか・・・!」


「よいしょ」
コルネは少年をひょいと持ち上げ、お姫様抱っこをした。
「え?」
そして
「うわ何これちょっとーーーーーーー!」
少年絶叫。
なんと少年を抱えたまま、コルネはものすごいスピードで疾走し始めた!
ものすごいスピード。
さらにそのまま湖の上を横断!あり得ない!
「うそぉ!?水の上走ってる!え?え?なんでーーー!」
恐るべしコルネパワー。
「うほほーーい!楽しいねぇ!」


そのまま湖を渡りきってしまった。
「う・・・・ウソだろ・・・・」
少年はコルネにお姫様抱っこされたまま唖然としていた。
コルネは、ウヒョーイとか奇声を上げながらいい顔で走り続けた。



つづく