「はい、ずっと歩いてきてお腹空いたでしょう?たくさん食べてね。」
女の人はそう言ってオーヴェたちにやさしくほほえみかけた。
「あ、ありがとうございます!」
4人掛けほどの大きさのテーブルに並んだパンにスープ、サラダにお肉。
目の前の食事を見て、オーヴェは目を輝かせた。
コルネは女の人に問いかける。

「だいじょーぶなの?オーヴェは牛一頭まるまる食べちゃうような大食漢だよ?」
「心配いらないわ。だってそんなに食べられるわけないでしょう?
女の人は冷静に答えた。
コルネとオーヴェは、数日ぶりのいい食事を満喫していた。

5 不思議な縁がある

話を戻すこと数十分。ちょうどお昼頃である。
二人は小高い丘を歩いていた。
「あー…腹減ったー…」
オーヴェは疲労と空腹でフラフラだった。
「がんばって!あともうちょっとだから……ほら!」
コルネが指差した先には一軒の家がある。その先には町もあった。」
「あっち行こ!」
「いや、近くに街があるんだ。そっち行こうぜ」
オーヴェが言ったが、コルネは首を振った。
「ううん、あの家ね、わたしの家!」
「マジか!あそこが!」
まさかこんな所にコルネの家があるとは。
「はー……以外と簡単に見つかったもんだなー」
オーヴェは安堵した。が

「グウウゥゥゥゥォォオオオオウゥ!!」
モンスターが現れた!

……と思いきや

「うえー……腹減った」
オーヴェの腹の音だった。

こんな事で、コルネ達は無事家にたどり着くことができたのである。

HAPPY END

「うおい!ちょっと待てコラ!」
何ですかオーヴェ君。そんな大声出して。
「終わるの早すぎだろ。何なんだ俺は。っつーかハピネストーンって何だよ
結局分からないまま終わるのかよふざけんな意味わかんな(以下略」

冗談です。
ハピネストーン、まだまだ続く!

……

そんなこんなで家に帰ったコルネとオーヴェは、コルネのお母さんに優しく迎えられ、
昼ごはんをごちそうしてもらった。

「おばさん、おかわり!」
オーヴェはおかわりを頼んだ。
「あら、オーヴェ君よく食べるのねえ。ふふ、今おかわり用意するからね。それと……」
コルネの母はにっこり笑った。しかし、背後からは黒いオーラが出ていた。

「”おばさん”じゃなくて”お姉さん”よ」
ニッコリ。

「は、はい……」
コルネ母の黒い笑みに、オーヴェは「こええぇ!」と心の中で思った。


「無事に帰って来られてよかったわコルネ。心配してたのよ。」
コルネの母はコルネにそう言った。しかしその表情は心配でも安堵でもなく、
”あーもー仕方ないわー”という呆れたような表情だった。

「うへへへ」
コルネは笑っていた。

「ねえ、おとうさんは?」
コルネが母に尋ねる。家に着いてから父の姿を見ていない。
「ああ、お父さんなら……」

「おーう!大黒柱的な何かが帰って来たぞー!」
男性の声だ。大黒柱的な何かって何だ。

「おとうさん!」とコルネ。
「あなた!」とコルネの母。
「俺!」
来たのはコルネの父だった。

「おとーさんただいまおかえりー!」
「おお、コルネじゃないか!」
コルネと父は一瞬、再会を喜んだ。
しかし

「おつかいはちゃんと行ってきたのかあぁぁ!?」
「忘れた!」
「忘れただと!?コルネエェ!!」
父はコルネに頼んだおつかいが果たされていないと知るや否や激怒した。

「うわああぁぁあんごめんなさいマイファアザアァァアア!!」
コルネはマッハで家から飛び出した。
「待てぇー!俺の頼みを忘れるなんて、許さん!」
父はそれを追いかけて家を飛び出して行った。

「……賑やか、ですね」
オーヴェは唖然としながらも言った。
「まあ、ね。二人共元気すぎてねー……」
コルネの母は苦笑していた。
二人はコルネ達の様子を見に外へ出た。

「待てー!」「うひゃー!」
コルネとコルネの父は追いかけっこを続けていた。
と思ったら

ゴスッ

「ふ……いいパンチだったぜ……」
父は何者かに強烈なパンチを受け、その場にドスンと倒れた。

「全く……アンタもいい加減にしたらどうだい?
コルネが可哀相じゃないか。そんな愛情の注がれ方で。」

呆れた声で言ったのは、さっきコルネの父を殴った人物だ。
女の人で、全身ゴツくはないが水色の丈夫そうな鎧を身に着けており、
頭には頑丈そうな帽子を目深に被っている。
年は40近くと言った所か、いかにも強そうに見えた。

「よ!コルネ。久しぶりだな!」
そう言って女の人は帽子を脱いだ。
「か……」
オーヴェはその顔に見覚えがあった。
彼女は世界中を冒険している、オーヴェの憧れの的……
「母さん!!」
オーヴェの母だった。


「オーヴェ!ひっさしぶりじゃないか!元気にしてたか?」
「うん、母さんも元気?今回はどんな冒険だった?」
オーヴェは嬉しさのあまり少しはしゃいでいる。
「ははは、その話は後でしよう。せっかく会いに来たんだ。ね、セレーナ?」
オーヴェの母は、コルネの母、セレーナに話しかけた。

「久しぶりね、リコ。」
セレーナはオーヴェの母、リコに向かって微笑んだ。
「もしかして……」
「ああ、紹介がまだだったね。コイツはオーヴェ。私の息子だよ。」
リコはセレーナにオーヴェを紹介した。

「まあ、息子…!これは何かの巡り合わせかしら?」
セレーナは驚いて言った。
「オーヴェ君、コルネと一緒にここまで来たのよ。」
「へえ!それは偶然だなぁ。面白い事もあるもんだね。」
リコは嬉しそうに言った。

「大きくなったなーコルネ。何年振りだっけ?」
コルネはリコと知り合いのようだ。
「えっとね、リコおばさんといっしょにぼーけんしたのがさいごだったから、4年ぶり?」
コルネは答えた。
「4年ぶり……一緒に冒険……!?」
オーヴェは驚いた。
そんなに幼いころから冒険をしていたというのか。

余談だがコルネは8歳だ。
つまり、4歳の頃から冒険をしたことがあるという事だ。

「あんたが生まれてちょっとしかしてない頃も冒険したねー」
「赤ちゃんの時!?」
オーヴェはさらに驚いた。
赤ちゃんの時に冒険。コルネって一体何なんだ?



リコとコルネ父をむかえ、食事が再開した。
「ああ、やっぱりセレーナの作る料理はサイコーだね!」
リコは喜んだ。
「ふふふ、喜んでくれて嬉しいわ。」
セレーナは微笑んだ。
「それにしても、不思議な縁があったものね。」

縁というのは、いたって不思議なものである。
コルネとオーヴェが偶然出会い、共にコルネの家にたどり着き、
時を同じくしてオーヴェの母リコもここに来た。
更にリコとコルネの母セレーナは友人同士だったのだ。
そしてコルネはリコと共に冒険した事があったのだ。

コルネとオーヴェが出会ったのは、何かの縁だったんだろうか。


続く